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2025/09/11

治具とは?コストの削減と安定した品質を両立する方法を解説!

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高品質な製品を効率的に生産するためには「治具(じぐ)」の活用が欠かせません。
治具は、作業の精度を安定させるだけでなく、無駄な工数や不良品の発生を減らし、結果的にコスト削減へとつなげてくれる器具です。

特に印刷工程では、細かなズレや圧力の偏りが品質に大きく影響を与えるため、治具の設計や使用方法が重要なポイントとなります。
また近年では、耐久性と安定性を兼ね備えた周辺部材の導入が進み、より精密で効率的な生産体制の構築が可能になっています。

本記事では、「治具とは何か」という基本から、における具体的な活用シーン、さらに品質とコストの両立を実現する方法について、詳しく解説します。

目次

  1. 治具とは?
  2. 治具を使用するメリット
  3. 最適な治具を選ぶための3つのポイント
  4. さまざまな製造工程で活躍する治具
  5. 治具制作なら、特殊阿部製版所にご相談ください


治具とは?

治具(じぐ)とは、製造や加工の工程において、ワーク(加工対象物)を正確な位置に固定したり、作業を補助したりするための器具の総称です。
英語の「jig」の当て字が語源となっています。

治具は、主に、製品の品質を均一に保ち、作業効率を向上させる目的で使用されます。

治具の役割-「位置決め」と「作業の補助」

治具の主な役割は、「位置決め」と「作業の補助」の2点に集約されます。

位置決め(ポジショニング)

治具は、ワークを正確な位置に固定し、加工や印刷のズレを防いでくれます。
特に精密な作業が求められる印刷工程では、ミリ単位、時にはミクロン単位での位置決めが品質を左右します。

作業の補助

治具は、作業者が手作業で行うには困難だったり、熟練を要したりするような作業を簡素化し、補助してくれます。
これにより、誰でも一定の品質で作業を行えるようになり、作業効率が向上します。

たとえば、印刷工程では、印刷対象物を所定の位置に確実に固定し、絵柄との位置関係を常に一定に保つことで、毎回同じ品質の印刷が可能になります。

工具・型・取付具との違い

治具と混同されやすい言葉に「工具」「型」「取付具」がありますが、それぞれ異なる役割を持っています。

工具

工具とは、直接的に加工を行う道具(例:ドリル、ドライバー、ペンチなど)のことです。

一方、治具は工具の使用を補助するものです。

型とは、材料を流し込んだり、プレスしたりして、特定の形状を作り出すもの(例:射出成形金型、プレス金型など)です。

一方、治具はワークを固定するもので、それ自体が形状を作るわけではありません。

取付具(フィクスチャ)

取付具(フィクスチャ)とは、ワークを機械に固定するための装置全般を指します。

治具は取付具の一種ともいえますが、より広範な「作業補助」の役割を含みます。
治具は、単に固定するだけでなく、特定の作業手順や精度を確保するための工夫が凝らされている点が特徴です。

治具を使用するメリット

高品質な治具を導入することでもたらされる、特に重要な3つのメリットを解説します。

品質の均一化と不良率の低下

治具の最大のメリットの一つが、製品品質の均一化です。

手作業や目視に頼る作業では、どうしても個人のスキルや経験によって仕上がりにバラつきが生じます。
しかし、治具を使用することで、ワークの固定位置や加工条件が常に一定に保たれるため、以下のような効果が期待できます。

印刷ズレや位置ズレの防止

ワークを正確に固定し、印刷位置を安定させることで、デザインのズレや欠けを防ぎます。

印圧の均一化

パッド印刷やホットスタンプなど、圧力がかかる工程において、治具がワークを適切に支えることで、印圧の逃げや偏りをなくし、ムラのない仕上がりを実現します。

不良品の削減

品質のバラつきがなくなることで、不良品の発生率が大幅に低下します。
これにより、材料費や工数の無駄がなくなり、コスト削減に直結します。

作業時間の短縮とコスト削減

治具は、作業効率の向上にも寄与し、結果として全体的なコスト削減に貢献します。

段取り時間の短縮

治具により、ワークのセットアップや位置調整にかかる時間を短縮できます。
治具にワークをセットするだけで、すぐに作業を開始できるため、多品種少量生産においても効率的です。

作業スピードの向上

手作業での微調整が不要になるため、作業者は、よりスピーディーに工程を進めることができます。

再作業の減少

不良品が減ることで、修正や再生産にかかる時間を削減できます。

人件費の最適化

作業が簡素化されることで、熟練工でなくても一定の品質を保てるようになり、作業者ごとの生産性差が縮まります。

これらの要素が複合的に作用し、生産リードタイムの短縮と生産コストの削減を実現します。

人手不足対策

少子高齢化が進む現代の日本において、多くの製造業で人手不足が深刻な課題となっています。
治具は、この人手不足対策にも有効な手段となります。

作業の標準化・簡素化

治具を使用することで、複雑な作業工程が標準化され、誰でも簡単に作業を行えるようになります。
これにより、新人教育の負担が軽減され、短期間で戦力化することが可能になります。

熟練工の負担軽減

熟練工が担っていた精密な位置決めや調整作業を治具が代行することで、熟練工はより高度な業務やマネジメントに集中できるようになります。

作業負担の軽減

治具がワークをしっかりと保持するため、作業者は無理な姿勢や力作業から解放され、身体的な負担が軽減されます。
これにより、労働が長時間にわたる場合も楽に作業を行えるようになります。

この結果、治具が作業環境の改善につながり、従業員の定着率向上にも寄与する可能性があります。

最適な治具を選ぶための3つのポイント

治具の導入を検討する際、自社の製造工程に最適なものを選ぶことが重要です。

ここでは、治具選びの際に考慮すべき3つのポイントを解説します。

ポイント①:製造工程の「目的」から種類を絞り込む

まずは、どのような工程で治具を使用するのか、その「目的」を明確にすることが重要です。
これは、目的によって求められる治具の種類や機能が大きく異なるためです。

印刷用の治具の場合、ワークの正確な位置決め、固定、印刷時の圧力や位置の安定化が主な目的となります。
さらに、パッド印刷、シルクスクリーン印刷、ホットスタンプなど、印刷方式によって適切な治具が異なります。

ポイント②:ワーク(対象物)の特性に合わせた「材質」を選ぶ

治具の材質は、ワークの形状、素材、加工方法、使用環境によって慎重に選ぶ必要があります。
これは、不適切な材質を選ぶと、ワークを傷つけたり、治具自体の耐久性が低下したりする可能性があるためです。

以下のように、ワークの素材(プラスチック、金属、ガラスなど)、硬度、表面仕上げなどを考慮し、最適な材質を選定しましょう。

金属製治具(アルミニウム、ステンレスなど)
高精度が求められる場合や、耐久性、剛性が必要な場合に適しています。熱や化学薬品に強い特性もあります。

樹脂製治具(MCナイロン、POM、ABSなど)
ワークを傷つけたくない場合や、軽量化したい場合に有効です。絶縁性や耐薬品性を持つものもあります。

シリコン
特にパッド印刷用治具として、ワークの形状に柔軟にフィットし、安定した保持力を提供します。ワークへのダメージを最小限に抑え、インクの転写を補助する役割も果たします。耐熱性や耐摩耗性にも優れており、耐久性が高いのが特徴です。

ポイント③:必要な「加工精度」のレベルを明確にする

治具自体の加工精度も、製品の品質に直結する重要な要素です。
最終製品に求められる精度に応じて、治具の精度レベルを決める必要があります。

ただし、過剰な精度はコスト増に繋がるため、必要な精度とコストのバランスを見極めることが重要です。
専門業者と相談し、最適な精度レベルを決定することをおすすめします。

高精度治具
ミクロン単位での位置決めや、複雑な形状のワークに対応する場合に必要です。設計・製造コストは高くなりますが、最終製品の品質を保証するために不可欠です。

汎用治具
そこまで高い精度が求められない場合や、多品種少量生産で柔軟な対応が必要な場合に適しています。コストを抑えつつ、ある程度の品質向上を目指せます。

さまざまな製造工程で活躍する治具

治具は、印刷物のさまざまな製造工程で真価を発揮します。
ここでは、代表的な工程ごとの治具の活用例をご紹介します。

印刷用治具(パッド印刷用・シルクスクリーン印刷用・ホットスタンプ用)

まずは、印刷用治具の種類を見ていきましょう。

パッド印刷用治具

パッド印刷は、凹凸のある製品や曲面への印刷に適した方式です。
パッド印刷用治具は、ワークを安定して保持し、インクを転写するシリコンパッドとの位置関係を正確に保つ役割があります。
シリコンパッドとの組み合わせで、複雑な形状への印刷も可能にします。

ワークの形状に合わせた専用設計が必須となりますが、小ロットの印刷であれば簡易治具での対応なども可能です。

パッド印刷について詳しくは、下記の記事をご覧ください。

【関連記事】
パッド印刷(タンポ印刷)とは?仕組みから必要なものまで紹介!

シルクスクリーン印刷用治具

シルクスクリーン印刷は、平らな面にインクを転写する印刷方式です。
治具は、版とワークの正確な位置関係を保ち、印刷のズレを防ぎます。

特に多色刷りの場合、色ごとの位置ズレを防ぐための高精度な治具が求められます。

ホットスタンプ用治具

ホットスタンプ(箔押し)は、熱と圧力で箔を転写する加工です。
治具が、ワークをしっかりと固定し、熱と圧力が均一にかかるようにサポートします。
熱が加わるため、耐熱性のある素材が選ばれることが多いです。

二次加工用治具(高周波誘導加熱用・超音波溶着用)

治具は、印刷だけでなく、金属や、樹脂、非鉄金属の二次加工においても、重要な役割を担っています。

高周波誘導加熱用治具

高周波誘導加熱とは、高周波の電磁誘導を利用して、金属などを加熱することで、金属部品の焼入れやろう付けなどに利用されます。

高周波誘導加熱用治具は、加熱対象となる部品を正確な位置に固定し、均一な加熱を可能にします。
加熱による変形を防ぐため、耐熱性と剛性に優れた素材が選ばれます。

超音波溶着用治具

超音波溶着とは、超音波を利用して、樹脂や非鉄金属を接合する技術の一種で、プラスチック部品などを接合する際に用いられます。

超音波溶着用治具は、溶着する部品を正確な位置で保持し、超音波の振動を効率的に伝える役割があります。

溶着する部品の形状に合わせた専用設計が必要です。

その他の治具

上記以外にも、治具はさまざまな工程で活用されています。

組立用治具…複数の部品を組み付ける際に、正確な位置関係を保ちながら作業を補助します。
検査用治具…印刷位置確認用や、製品の寸法や形状、機能が設計通りかを確認するための基準や測定補助具として使用されます。
搬送用治具…デリケートな製品や特殊な形状の製品を、工程間で安全に搬送するために使用されます。
成形品の反りを修正するための矯正用…成形品を矯正治具にはさみ、一定の圧力をかけて逆反り状態に保持するのに使用されます。
各種アッセンブリ用…部品を所定の位置に正確に固定した状態で、組み付けや圧入などの工程を実施するために使用されます。

治具制作なら、特殊阿部製版所にご相談ください

治具は、製品の品質安定、コスト削減、そして生産性向上に不可欠な存在です。
特に印刷業界においては、微細なズレが製品全体の品質を大きく左右するため、高精度で耐久性のある治具の導入が求められます。

特殊阿部製版所では、長年の経験と実績に基づき、お客様の多様なニーズに合わせた最適な治具の設計・製造を行っております。
特に、パッド印刷用治具や、耐久性に優れたシリコンパッドの提供には自信があります。

使用する材料は、各種金属やさまざまな樹脂など。被印刷物(ワーク)にキズが付きにくい材料を使用することもできます。

「品質を安定させたい」「不良品を減らしたい」「作業効率を上げたい」といったお悩みをお持ちの印刷業ご担当者様は、ぜひ一度、特殊阿部製版所にご相談ください。

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