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2025/08/05

パッド印刷(タンポ印刷)とは?仕組みから必要なものまで紹介!

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パッド印刷とは、曲面や凹凸のある製品にも印刷できる特殊な印刷技術で、自動車部品から医療機器、おもちゃなど、身の回りにあるさまざまな製品に活用されています。

しかし、その具体的な仕組みや、どのような製品に適しているのか、導入には何が必要なのか、詳しくご存じない方もいらっしゃるかもしれません。

そこでこの記事では、パッド印刷(タンポ印刷)の基本的な仕組みから、その特徴、メリット・デメリット、そして導入に必要なものまでをご紹介いたします。


パッド印刷(タンポ印刷)とは?

パッド印刷(タンポ印刷)とは、曲面や凹凸のある製品にも印刷できる特殊な印刷技術のことです。

柔らかいシリコン製のパッドを用いてインキを転写するため、平面だけでなく曲面や凹凸のある製品、不規則な形状の製品にも印刷できるのが特徴です。

パッド印刷(タンポ印刷)の仕組み

パッド印刷(タンポ印刷)の具体的な仕組みとしては、まず、印刷するデザインが彫刻された版(プレート)にインキを塗布します。

次に、その版から余分なインキをドクターブレードと呼ばれる道具で拭き取り、必要なインキのみを版に残します。

その後、シリコンパッドを版に押し当ててインキを吸着させ、そのインキを吸着したパッドを印刷対象物に押し当てて転写します。

この一連の工程を繰り返すことで、連続して印刷が行われます。シリコンパッドの柔軟性が、さまざまな形状の表面にインキを均一に転写することを可能にしています。

パッド印刷(タンポ印刷)でできること

パッド印刷は、その柔軟性から多岐にわたる製品への印刷が可能です。たとえば、ゴルフボールのような球体、医療機器の曲線部分、自動車部品の複雑な形状、電化製品のスイッチ部分、人形の小さな目など、従来の印刷方法では難しかった対象物にも鮮明な印刷を施せます。

また、微細な文字やロゴ、繊細なデザインも鮮明に再現できるため、製品のデザイン性を高めることもできます。

素材もプラスチック、金属、ガラス、セラミックなど幅広いものに対応しており、素材に合わせたインキを選定することで、耐久性の高い印刷が可能です。

こうした柔軟な印刷を安価に行えるのがパッド印刷なのです。

パッド印刷(タンポ印刷)のメリット

パッド印刷(タンポ印刷)には、主に「曲面や凹凸面など多様な面へ印刷が可能」「小さな文字や繊細なデザインの再現性が高い」という2つのメリットがあります。

曲面や凹凸面など多様な面へ印刷が可能

パッド印刷の最も大きなメリットは、その高い適応性です。シリコンパッドの柔軟性により、平面はもちろんのこと、曲面、凹凸面、そして複雑な形状の製品にも高精度な印刷を行えるのが特徴です。

たとえば、ペンやボトル、家電製品の操作ボタンなど、立体的な形状を持つものへの印刷に力を発揮します。これは、他の多くの印刷方法では難しい、パッド印刷ならではの強みといえます。

小さな文字や繊細なデザインの再現性が高い

パッド印刷は、微細な文字やロゴ、繊細なデザインを鮮明に再現することにも優れています。
これは、インキをパッドに吸着させ、対象物に転写する際の精度が高いためです。

このメリットから、医療機器や精密部品のように、非常に小さなスペースに正確な情報を印刷する必要がある場合にも、対応できます。

パッド印刷(タンポ印刷)のデメリット

一方、パッド印刷(タンポ印刷)にもデメリットがあります。
「印刷範囲に制約がある」「多色刷りやグラデーション表現の難易度が高い」の2点です。

印刷範囲に制約がある

パッド印刷は、大きな面積への印刷には不向きな場合が多く、広い範囲にデザインを施したい場合には、別の印刷方法を検討する必要があります。

また、パッドの転写面積にも限界があるため、印刷物のサイズとデザインのバランスを考慮することが大切です。

多色刷りやグラデーション表現の難易度が高い

パッド印刷で多色刷りを行う場合、色ごとに版とパッドを準備し、色を重ねて印刷する必要があります。

このため、色数が増えるほど工程が複雑になり、位置合わせの精度も求められます。また、グラデーションのような色の濃淡を滑らかに表現することは、パッド印刷の特性上、比較的、難易度が高いとされています。

パッド印刷(タンポ印刷)と他の印刷方法との違い

パッド印刷と、代表的な他の印刷方法とを比較してみましょう。

①シルクスクリーン印刷

シルクスクリーン印刷は、版に開けられた孔(あな)からインキを押し出して印刷する方法です。
インキの層が厚く、耐久性に優れるという特長があります。
Tシャツや看板など、比較的大きな平面への印刷に適しています。

パッド印刷と比較すると、シルクスクリーン印刷は平面への印刷が中心であり、曲面や凹凸面への対応は限定的です。
また、パッド印刷が微細な印刷を得意とするのに対し、シルクスクリーン印刷は、より大胆なデザインやインキの盛り上げ表現に向いています。

②ドライオフセット印刷

ドライオフセット印刷は、オフセット印刷の一種ですが、刷版は凸版を使用します。通常のオフセット印刷とは異なり、湿し水を使用しないため、「ドライオフセット」といいますが、水なし印刷ではありません。湿し水を使用しないため、にじみが少なく、鮮明な印刷が可能です。

インキが版からブランケット(ゴム布)に転写され、さらにブランケットから被印刷物に転写する間接印刷方式です。

パッド印刷と比較すると、ドライオフセット印刷は主に平面への印刷、特にプラスチックシートや金属板などの薄い素材への精密な多色印刷に強みがあります。パッド印刷のような立体物への対応は難しい傾向にあります。

③ホットスタンプ(箔押し)

ホットスタンプ(箔押し)は、熱と圧力を利用して金属箔などを対象物に転写する加工方法です。光沢感や高級感を演出する際に用いられ、製品のロゴや文字に特別な質感を加えられます。

主に平面、またはごくわずかな曲面への加工に適しており、印刷というよりは装飾加工に近い位置づけです。

パッド印刷のようにインキを転写するのではなく、箔を押し付けるため、色の表現や微細なデザインの再現性においてはパッド印刷とは異なる特性を持ちます。

パッド印刷(タンポ印刷)の3つの印刷事例

パッド印刷(タンポ印刷)の活用について、具体的なイメージを掴んでいただくために、特殊阿部製版所で行ったパッド印刷(タンポ印刷)の3つの事例をご紹介いたします。

ワイングラス(ガラス)へ印刷事例

パッド印刷にてワイングラスへの試作を行った事例です。

試作に用いた商品情報は以下の通りです。

  • 材質:クリスタルガラス(鉛フリー)
  • 容量:730ml
  • 重さ:200g
  • サイズ:111mm×220mm、口径75mm
  • 印刷範囲:横40mm×縦47mm

ブルゴーニュグラスとよばれる、かなり大きめのワイングラスに、社内で調色を行って印刷しました。

また、パッド印刷による文字入れのほかにも、グラスのふちに、金色で印刷することによって高級感を出す「口線加工(金巻き)」にも対応可能です。

本事例について詳しくは、下記ページをご覧ください。
https://tokuabe-print.com/20231205-2/


再生プラスチック製の生活雑貨への印刷事例

 

タイ生まれの雑貨ブランド「BOPE(ボープ)」様にご協力いただき、フェスグッズを想定した、さまざまなプラスチック雑貨にパッド印刷した事例です。

試作に用いた商品は、以下の通りです。

  • コースター
  • モバイルスタンド
  • フラワーポット
  • トレイ
  • ソープトレイ

BOPEでは、どの製品も100%再生プラスチックのみを原材料としています。
今回、印刷の対象となったのは、再生PP(ポリプロピレン)。
再生PP(ポリプロピレン)は、印刷が難しい材料として知られています。

PP素材には水をはじく性質があるので、濡れ指数(素材に液体がなじむ強さ)を高めるための前処理が必要となります。

なお、PP製品への印刷は、レーザーマーキング印刷でも対応可能ですので、お問い合わせください。

本事例について詳しくは、下記ページをご覧ください。
https://tokuabe-print.com/20240725-2/

クリスマスオーナメントボール(球体)への印刷事例

クリスマスオーナメントボール(球体)への印刷事例です。
株式会社ワコールアートセンター様よりご依頼いただき、
アーティストの村山 大明 様が描いた動植物のペン画をクリスマスオーナメントに印刷しました。

球体型のプラスチック製オーナメントは、ポリスチレン(PS)素材でつくられていることが多いです。
塗装されているものがほとんどで、塗装面への印刷となるため、密着は比較的、良好です。

なお、おおまかではありますが、当社で印刷できる範囲が下記の通りです。

  • 直径80mmのオーナメントボールであれば、75mm以内のデザイン(歪みを考慮すると65mmまでが妥当)
  • 直径60mmのオーナメントボールであれば、60mm以内のデザイン(歪みを考慮すると50mmまでが妥当)

プラスチック以外にも、ガラス製や陶器製のオーナメントに印刷が可能です。
ただし、注意点もあるため、まずは製品情報とともにご相談ください。

本事例について詳しくは、下記ページをご覧ください。
https://tokuabe-print.com/20231214-2/

パッド印刷(タンポ印刷)に必要なもの

このようなパッド印刷を導入・運用するためには、いくつかの専用の機材と資材が必要になります。

パッド印刷機

まずは、パッド印刷の中核となる機械です。まずは、パッド印刷の中核となる機械です。
パッド印刷機には、手動式、半自動式、全自動式があり、印刷量や予算、印刷対象物の種類に応じて選びます。小ロット生産や試作には手動機、中ロットには半自動機、大量生産には全自動機が適しています。

パッド印刷機の主な構成要素が「版」「シリコンパッド」「ドクターブレード」「治具」です。

パッド印刷には、印刷デザインが凹状に加工された版(凹版)が必要です。印刷したい文字や絵柄のフィルムを作製し、化学処理を行うことで凹版ができあがります。
パッド印刷に使う版なので「パッド版」と呼ばれることもあります。

版には、スチール製のものと樹脂製のものがあり、印刷する数量によって材質を選定します。

スチール製では、0.5mm厚のもので5万ショット、10mm厚のもので50万ショットほど使用が可能です。
※印刷するデザインなどの条件によって前後します

シリコンパッド

インキを版から対象物に転写する役割を担うのが、シリコン製の柔らかい部品である、シリコンパッドです。
簡単にいうと、シリコンパッドは印刷版から対象物にインクを運ぶ役割を担います。

パッドの硬度、形状、サイズが多岐にわたるため、印刷対象物の形状やインキの種類、印刷精度に合わせて最適なパッドを選びます。

またシリコンパッドを機械にセットするために「ベース」も必要です。ベースには、アルミ素材でできたもの、ベニヤ素材でできたものなどがあります。

ドクターブレード

版の表面から余分なインキを掻き取るための部品が、ドクターブレードです。「スキージ」とも呼ばれます。
カッターのような形状をしており、版の上に残っている無駄なインキをそぎ落とします。

これにより、デザイン部分にのみ適量のインキが残り、鮮明な印刷が可能になります。ドクターブレードの材質や角度、圧力の調整が、印刷の仕上がりに大きく影響します。

治具

治具とは、印刷対象物を固定し、動かないようにするための補助具です。治具とは、印刷対象物を固定し、動かないようにするための補助具です。
特に曲面や不規則な形状の製品に印刷する際には、対象物が動かないようにしっかりと固定する治具が不可欠です。

治具の精度が、印刷の位置ずれ防止や生産効率の向上に直結します。対象物の形状に合わせて、専用の治具を作成するため、費用がかかります。

治具が必要ないケース、小ロットの印刷であれば簡易治具での対応なども可能です。

治具について詳しくは、下記の記事もご覧ください。

【関連記事】
印刷のはなし #1 「治具はなぜ必要?」

インキ

印刷対象物の素材や用途に合わせた専用のインキを使用します。

プラスチック用、金属用、ガラス用など、素材ごとに適したインキの種類があり、インキの選定は印刷の密着性や耐久性に大きく関わります。
速乾性や耐候性、耐薬品性など、求める性能に応じて適切なインキを選ぶ必要があります。

パッド印刷(タンポ印刷)なら特殊阿部製版所にお任せください

特殊阿部製版所は、曲面印刷のスペシャリストとして、長年にわたり多くの実績を積んでまいりました。

お客様の多様なニーズにお応えできるよう、経験豊富なスタッフが最適なパッド印刷(タンポ印刷)の資材をご提案いたします。

また、資材だけでなく印刷機やインキも含めたトータルでのご提案も可能です。

曲面や凹凸のある製品への印刷でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

パッド印刷(タンポ印刷)資材はこちら

内面へのパッド印刷技術

UVパッド印刷技術

導電パターン形成

まとめ

パッド印刷(タンポ印刷)は、柔軟なシリコンパッドの特性を活かし、平面だけでなく、曲面や凹凸のある多様な形状の製品にも高精度な印刷を可能にする特殊な印刷技術です。

微細な文字や繊細なデザインの再現性に優れ、プラスチック、金属、ガラスなど幅広い素材に対応できる点が大きなメリットです。

一方で、印刷範囲の制約や多色刷り、グラデーション表現の難易度が高いといったデメリットも存在します。

導入にはパッド印刷機、版、シリコンパッド、ドクターブレード、治具、インキといった専門的な設備や資材が必要となります。

パッド印刷(タンポ印刷)機やパッド印刷(タンポ印刷)資材をご希望の方は、特殊阿部製版所まで、お気軽にご相談ください。