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2026/08/18

夏になると版残りが増えるのはなぜ?高温がパッド印刷の転写に与える影響

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前回の記事では、夏になるとインキやワーク、版などの状態が変化し、印刷条件そのものが変わることをご紹介しました。
その中でも、弊社へ特に多く寄せられるご相談が「版残り」です。
「朝は問題なく印刷できていたのに、午後から版残りが増えた。」
「パッドを新品にしても症状が変わらない。」
このような現象は、夏場によく見られます。

版残りが発生すると、シリコンパッドの劣化と考えがちですが、実際には高温によってインキの状態が変化していることが原因の場合も少なくありません。

今回は、夏場に版残りが起こりやすくなる理由について解説します。

目次
1. そもそも「版残り」とは?
2. パッド印刷は「適度な揮発」が重要です
3. 夏になると何が起こるのでしょうか
4. 午後になると版残りが増える理由
5. 「シリコンパッドが悪い」と決めつける前に確認したいこと
6. まとめ

そもそも「版残り」とは?

パッド印刷では、版のエッチング部分に入ったインキをシリコンパッドが受け取り、ワークへ転写します。
正常な状態では、版のエッチング部からインキが均一に持ち上がり、きれいにワークへ転写されます。
しかし、何らかの原因でインキが版に残ってしまうことがあります。
これが「版残り」です。

版残りが発生すると、

  • 印刷が欠ける
  • ベタ部分が抜ける
  • 線が細くなる
  • 印刷濃度が安定しない

といった不良につながります。


梅雨では「水分」が問題になります。
一方、真夏では「温度」によって材料そのものの状態が変化することが、大きな違いです。
つまり、同じ「夏場の印刷トラブル」でも、そのメカニズムは全く異なります。

パッド印刷は「適度な揮発」が重要です

「揮発が早い=悪い」と思われることがありますが、実はそうではありません。
パッド印刷では、インキがシリコンパッドへ転写しやすい状態になることが重要です。 
版の中にあるインキは、ドクターブレードで掻いた後に表面の溶剤が少し揮発することで、
シリコンパッドがインキを受け取りやすい状態になります。

つまり、

  • 全く溶剤が揮発していない状態でも転写しにくい
  • 揮発しすぎても転写しにくい

という特徴があります。

ここで重要なのは、「乾けば乾くほど良い」というわけではないということです。
例えば、スクリーン印刷やオフセット印刷では、印刷後にインキが速やかに乾燥することが重要になります。
一方、パッド印刷では、版からシリコンパッドへ転写する前に、インキが最適な状態になっていることが重要です。
そのため、乾燥不足でも転写できず、乾燥しすぎても転写できません。

適度に溶剤が揮発し、シリコンパッドが最もインキを受け取りやすい状態を保つことが、安定した印刷品質につながります。
夏場は高温の影響でこの変化が想定より早く進むため、版残りなどの印刷不良が発生しやすくなります。


夏になると何が起こるのでしょうか

夏場は気温が高くなることで、インキに含まれる溶剤が通常より早く揮発します。
すると、版の上では次のような変化が起こります。

高温

溶剤が早く揮発する

インキ表面が想定より早く乾く

シリコンパッドがインキを受け取りにくくなる

版残りが発生する

この現象は、印刷速度やインキの種類、工場内温度など、さまざまな条件が重なることでさらに顕著になります。


 

午後になると版残りが増える理由

例えば、朝は25℃だった工場内が、午後には35℃近くまで上昇したとします。
印刷機の設定は変えていません。
版も同じです。
シリコンパッドも交換していません。
それでも午後になると版残りが増えることがあります。

これは、印刷機が変わったのではなく、インキの状態が変わったためです。
時間の経過とともに溶剤は揮発し、さらに気温も上昇することで、朝とは異なる転写条件になってしまいます。

さらに、午後になると変化するのは気温だけではありません。
印刷機本体、版、シリコンパッド、インキ、ワークなども少しずつ熱を持ち始めます。

つまり、印刷条件は一つだけが変化しているのではなく、複数の条件が同時に変化しているのです。
そのため、「昨日と同じ設定」「午前中と同じ設定」のつもりでも、午後になると版残りが発生することがあります。

 

「シリコンパッドが悪い」と決めつける前に確認したいこと

版残りが発生すると、「シリコンパッドを交換しよう」と考えることがあります。
もちろん、版やパッドが原因となるケースもあります。
しかし夏場は、それだけではありません。

まずは次の点も確認してみてください。

□ 工場内温度は朝と比べて上がっていないか

午後だけ不良が増える場合は、気温との関係も疑ってみましょう。

□ 湿度は朝と比べて下がっていないか

エアコンを使っている場合は、湿度が急激に低下していないか確認しましょう。

□ インキはいつ調合したか

朝に調合したインキを、そのまま午後も使用していませんか。

時間の経過とともにインキの状態は変化します。

□ ワークが熱くなっていないか

成形直後や直射日光が当たる場所に置かれていたワークは、想像以上に高温になっていることがあります。

□ 不良が発生した時間を記録しているか

「午後からだけ発生する」

「30℃を超えると増える」

このような傾向が分かるだけでも、不良原因を切り分ける大きなヒントになります。

まとめ

夏場の版残りは、高温の影響によってインキの状態や転写条件が変化することで発生しやすくなります。
現場では、版残りが発生すると、まずインキの希釈や粘度の調整、送風や乾燥条件の見直し、
シリコンパッドの状態確認などを行うことが一般的です。

それでも改善しない場合は、工場内の温度やワーク温度、インキを調合してからの経過時間など、夏特有の環境変化にも目を向けてみてください。

また、版残りは一つの原因だけで発生することは少なく、インキ・温度・湿度・印刷条件など、
複数の要因が重なることで発生するケースがほとんどです。 
「昨日と同じ条件」「午前中と同じ条件」のつもりでも、実際には印刷環境は大きく変化しています。

トラブルが発生した際は、印刷条件だけでなく、工場内温度・湿度、不良が発生した時間などもあわせて記録しておくことで、原因の切り分けがしやすくなります。

夏場は機械だけでなく、印刷環境そのものを管理することが、安定した品質につながる重要なポイントです。


 


 

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