ホットスタンプ用刻印(版)の種類と用途に合わせた選び方を紹介
「ホットスタンプ用の刻印(版)にはどのような種類があり、自社の製品にはどれが最適なのか?」とお悩みではありませんか。
現在、印刷業界では製品の付加価値向上を目的に箔押し加工の需要が再認識されていますが、仕上がりの美しさや生産コストを左右するのは、実は「刻印の選定」です。
この記事では、ホットスタンプ用刻印の材質や構造、用途に合わせた適切な選び方をご紹介いたします。
ホットスタンプの刻印(版)選びの基本
ホットスタンプ(箔押し)において、仕上がりの美しさと生産効率を左右する最大の要因は刻印(版)の選定にあります。
選び方の基本は、「ワーク(被印刷物)の硬度や形状に対して、適切な硬さと弾性を持つ素材を選ぶこと」に集約されます。
たとえば、硬いプラスチック製品に対して硬い金属版を用いると、わずかな歪みや「ヒケ(成形時の凹み)」があるだけで箔が乗らない箇所が出てしまいます。一方で、柔らかいラバー素材の版は、これらの誤差を吸収して均一な転写を可能にします。
以下で、ホットスタンプの刻印(版)の種類についてご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
金属刻印版(金型)

金属刻印版は、古くから箔押しの現場で重宝されてきた伝統的な版です。主に真鍮(しんちゅう)や鉄などの金属材料を加工して製作されます。
構造
金属刻印版(金型)は、真鍮や鉄といった金属を直接彫刻して製作します。
特徴
被印刷物を溶かしながら転写するのが金属刻印版(金型)の特徴です。このため、食い込み感を出ます。
また、輝度感(光沢)も出せます。
彫角・高さ・段数の自由度が高く、非常に高耐久であることも大きな特徴です。
耐久性の目安としては、鉄の金属刻印版(金型)は、80から100万ショット、真鍮は約30万ショットが可能です。
向いている用途・ロット
- 大量生産ライン
- 革・金属・硬質樹脂
- 空押し
- 高級感重視加飾
メリット・注意点
金属刻印版(金型)のメリットは、高精細で長寿命な点です。
また、品質再現性が最も高いのが金属刻印版(金型)です。
一方、注意点(デメリット)は、重量があり、コストも高い点です。
このため、再版(作り直し)は高額になりやすいです。
治具精度要求が高い点にも注意が必要です。
ラバー版
プラスチック容器や家電、雑貨などのホットスタンプで主流となっているのが、シリコンゴムを使用したラバー版です。
シリコン系刻印版(ラバー版)には、「彫刻ラバー版(スタンダードラバー)」と「Eラバー版(エッチングラバー)」があります。
彫刻ラバー版(スタンダードラバー)

彫刻ラバー版(スタンダードラバー)は、平面や曲面への箔押しをラバーで行うための版です。
構造
彫刻ラバー版(スタンダードラバー)の構造は、「金属刻印(凸)」+「PC樹脂凹型」+「ラバー」です。
金属を彫刻し、これをもとに PC 樹脂凹型を作成した後、これを元にラバーを形成して版を作ります。
特徴
特徴としては、金属刻印由来のため、彫角・高さ・段数が調整可能です。
また、版に弾性があるため、曲面への対応が可能で、ヒケや寸法のバラつきも吸収されます。
転写後の箔の輝度が低下するため、仕上がりはややマイルドな印象となります。
耐久性の目安は、約5から10万ショットです。
向いている用途・ロット
- 中ロット量産
- ボトル
- チューブ
- 軽R面
メリット・注意点
メリットは、安定性が高く、曲面に強い点です。
また、ラバーのみ交換が可能なため、再版コストを安く抑えられます。
一方、注意点としては、金属よりエッジが甘い点、線が太りやすい(約0.04mm)点が挙げられます。
また、構造が「母型+PC+ラバー」となっている分、初期費用がやや高い点もデメリットでしょう。
Eラバー版(エッチングラバー)※平版のみ

大量生産なら金属版が、安定運用ならラバーが最適ですが、曲面への印刷・コスト・精細さのバランスなら、Eラバー版(エッチングラバー)が最適です。
構造
Eラバー版(エッチングラバー)の構造は、「腐食(エッチング)母型」+「PC樹脂凹型」+「ラバー」という簡易型ラバー版になっています。
特徴
母型は、腐食加工が施されています。
型代が安い点も特徴です。
再版はラバーのみ交換可能です。
Eラバーの文字の高さは、母型に使用するマグネシウム版の厚みで決まるため、高さを指定することはできません。
版厚1.6t →文字高さ 0.75から0.85mm(標準仕様)
版厚3.0t →文字高さ 1.3から1.5mm(文字の高さを出したい場合)
彫刻ラバー版、Eラバー版のラバー硬度は、60°、70°、80°、90°、95°から選択可能です。
向いている用途・ロット
- 小から中ロット
- マスカラ容器、アイライナー容器、チューブ容器側面への転がし方式(回転スタンプ)による印刷
- 試作(デザイン変更・試作が多い業界)
メリット・注意点
メリットは、何といっても「複雑なデザインの物でも低価格で提供できる」点です。
金属刻印版も彫刻ラバー版もデザインが複雑になればなるほど価格が上がりますが、Eラバー版は単純なデザインでも複雑なデザインでも同価格です。複雑なデザインを平面で作りたいお客様には大変おすすめです。
シリコン版よりもシャープな表現が可能で細文字も印刷できます。
金属版よりも柔軟・軽量です。
また、曲面追従性が高いです。
コストパフォーマンスも優れており、初期費用の型代も、再版も安価なため、トータルコストはNo.1です。
一方、彫角・高さ・段数の指定は不可です。
シリコン版よりは精細な表現が可能ですが、鈍角形状のため、細部が抜けにくいことがあり、金属ほどの精細性は出ません。
精細の限界は、次の通りです。
最細線:約0.1mm
実務推奨:0.15mm以上
また、深掘り不可で、強圧で潰れやすく、バラつきも出やすいです。
ホットスタンプ刻印の用途に応じた使い分け
製品の仕様に合わせて最適な版を選ぶためのポイントを整理してご紹介します。
【比較表】刻印タイプ別の選定ガイド
| 比較項目 | 金属刻印版(金型) | 彫刻ラバー版 | Eラバー版 |
|---|---|---|---|
| 主な素材 | 真鍮・鉄 | シリコンラバー | シリコンラバー |
| 適応形状 | 平面・硬質ワーク | 曲面・ボトル・チューブ | 円筒形状側面・ヒケ対応 |
| 精細表現 | ◎(最高にシャープ) | △(エッジが甘め) | △(エッジが甘め) |
| 耐久性 | ◎(30万~100万回) | △(5万~10万回) | △(5万~10万回) |
| 初期コスト | 高い | やや高い(母型+PC型) | 安い(エッチング版+PC型) |
| 再版コスト | 高い(作り直し) | 安い(ラバー交換) | 安い(ラバー交換) |
| 納期 | 時間がかかる | 早い | 早い |
| 現場負担 | 重い・調整がシビア | 軽い・調整しやすい | 軽い・セットが容易 |
生産性で選ぶなら
3種類の版から、生産性で選ぶなら、大量生産なら金属、安定運用ならラバーです。
大量生産なら金属、安定運用ならラバー
長期間にわたり同じデザインを数十万から百万個単位で作り続けるなら、耐久性に勝る金属版がコストパフォーマンスに優れます。
一方、成形品の個体差による不良率を下げ、安定して稼働させたい場合は、ラバー版の方が現場の調整負担を軽減できます。
形状で選ぶなら
3種類の版から、形状で選ぶなら、平面なら金属、転がしならEラバーです。
平面なら金属、転がしならEラバー
紙やフラットな板材であれば金属版が最適です。
一方、円筒形の容器を回転させながら箔押しする「転がし(ローリング)加工」や、微妙な曲面がある場合は彫刻ラバー版、「転がし(ローリング)加工」なら馴染みの良いEラバー版やが欠かせません。
コストと納期のバランスで選ぶなら
3種類の版から、コストと納期のバランスで選ぶなら、Eラバーです。
初期投資を抑え、最短納期で動くならEラバー
新製品の立ち上げ時や、短期間でのプロモーション品など、スピードと低コストが求められる場面ではEラバー版が圧倒的に有利です。
版代が安いため、デザイン変更にも柔軟に対応できます。
試作の多い業界にもおすすめです。
コスト×精細のバランスならEラバーがおすすめです
特に「見た目の美しさ」と「コスト」の両立が求められる現場では、Eラバー版の活用がおすすめです。
ヒケ・寸法バラつきに強い
Eラバーは、ヒケ・寸法バラつきに強いため、円筒形状を持つ製品への印刷の際、製品ごとの調整時間を大幅に短縮できます。
型代・再版コストが安い
金属版の数分の一の費用で製作できるケースが多く、コスト削減に直結します。
磨耗した際の再版も、安く迅速に行えます。
軽量・取り扱いが楽
重い金属版に比べ、薄くて軽いEラバー版は現場での交換作業がスムーズです。
保管スペースも取らず、管理業務の効率化にも貢献します。
化粧品・チューブ業界と相性が抜群
容器の質感が重要視される化粧品業界では、滑らかな箔の転写が不可欠です。
チューブのような柔らかい素材に対しても、Eラバーは過度な負担をかけずに美しい加飾を施せます。
ホットスタンプ刻印なら特殊阿部製版所にお任せください
ホットスタンプの品質を極めるには、適切な「版」とそれを支える「技術」が必要です。特殊阿部製版所では、長年培った技術を活かし、製品形状や材質に最適な刻印をご提案しています。
単に版を製造するだけでなく、加工の現場で発生する「箔が乗らない」「エッジがぼやける」といった課題に対しても、刻印の硬度調整や構造の工夫によって解決へと導きます。
Eラバーに関する詳細な資料をご用意しております。下記ページよりご請求ください。
https://01tokuabe-document.actibookone.com/content/detail?param=eyJjb250ZW50TnVtIjo1MjI4MjgsImNhdGVnb3J5TnVtIjo1NTY0MX0=&pNo=1
ホットスタンプ刻印について詳しくは、下記ページをご覧ください。
https://tokuabe.com/product/hotstamp.html
まとめ
ホットスタンプ用刻印の選定は、製品の仕上がりだけでなく、歩留まりや製造原価にも大きな影響を及ぼします。
金属版の圧倒的な耐久性、彫刻ラバー版の柔軟な追従性、およびEラバー版の高いコストパフォーマンスと精細さ、それぞれの特徴を理解し、用途に合わせて使い分けることが、調達・購買担当者にとっての重要なポイントです。
自社の製品にどの種類の刻印が適しているか迷われた際は、ぜひ一度、当社のような専門メーカーへ相談し、最適な仕様を検討してみてください。