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2026/05/27

有機溶剤代替として注目される「ペイントソルブW」

ブログ

以前、弊社ブログでは、洗浄工程の見直しに役立つ洗浄剤として「ペイントソルブM」をご紹介しました。ペイントソルブMは、水溶性・低臭気・有機則/PRTR非該当といった特徴を持ち、
浸透 → 膨潤 → 密着力低下 → 除去
という作用によって、“強く溶かす”だけではない洗浄方法を提案できる製品です。

▶ 前回の「ペイントソルブM」解説記事はこちら


今回ご紹介するペイントソルブWは、ペイントソルブMとは少し性格が異なります。

ペイントソルブWは、強固な塗料、厚膜、硬化した接着剤、重度汚れなどに対して、より高い溶解・剥離性能を持つ洗浄液です。そのため、ペイントソルブMの強力版ではなく、用途や対象物によって使い分けるべき洗浄剤と考える必要があります。

近年、シンナーや有機溶剤は供給不安、価格上昇、規制対応、作業環境改善といった課題があり、洗浄工程そのものを見直す現場が増えています。ペイントソルブWは、そうした課題に対して有機溶剤代替の選択肢となる洗浄液です。
一方で、洗浄力が高い分、素材への影響や使用条件には十分な注意が必要です。

洗浄工程は”落ちればいい”だけではない

印刷・塗装・製造現場において、洗浄工程は単なる後処理ではありません。

洗浄品質は、

  • 製品品質
  • 設備寿命
  • 生産安定性
  • 作業環境
  • コスト

に直結します。

従来の有機溶剤は高い洗浄力を持つ一方で、揮発性が高く、火災リスク、吸入リスク、臭気、廃液処理、素材への影響といった課題があります。また、揮発が早すぎることで洗浄結果が作業スピードや気温に左右されやすく、安定した洗浄が難しい場合もあります。つまり、従来溶剤は「よく落ちる」反面、複数のリスクと管理コストを抱えているというのが実態です。


ペイントソルブWとは

ペイントソルブWは、植物由来成分をベースとした工業用洗浄液です。インキ、塗料、接着剤、タール、レジスト、ワックスなどに対して、高い洗浄力・剥離力を発揮します。

また、

  • 消防法非該当
  • 有機則非該当
  • PRTR非該当
  • 低VOC
  • 蒸留再生可能
  • 超音波洗浄対応
  • 加温使用可能

といった特徴があり、有機溶剤の使用量削減や作業環境改善にもつながる可能性があります。

ペイントソルブMとの違い

ペイントソルブMは、比較的マイルドに作用し、素材への影響を抑えながら洗浄したい場合に向いています。

主な用途は、

  • インキ除去
  • 軽〜中程度の塗料除去
  • 接着剤除去
  • 脱脂洗浄
  • 日常的な洗浄工程

などです。

一方、ペイントソルブWは、より溶解・剥離寄りの洗浄液です。強固に付着した塗料、厚膜、硬化した接着剤、重度汚れなどには有効なケースがありますが、その分、樹脂・ゴム・感光性材料への影響にはより注意が必要です。

つまり、Mは“素材への影響を抑えながら落とす”方向。Wは“より強く剥離・除去する”方向。この違いを理解したうえで、対象物に合わせて選定することが重要です。


メーカー(インフィニティ社)による実験・検証例

ここからは、ペイントソルブWのメーカーであるインフィニティ社が公開している実験・検証例をご紹介します。実際の洗浄条件や対象物を用いた事例のため、「どのような用途で使われているのか」をイメージしやすい内容になっています。

ただし、洗浄結果は、

  • 素材
  • 塗料
  • インキ
  • 温度
  • 接触時間
  • 洗浄方法

によって大きく変わります。

そのため、以下の事例はあくまで参考例であり、実際の導入時には事前テストが必要です。

使用例:グラビア印刷シリンダのインキ洗浄

印刷業界では、インキ洗浄に揮発性の高い有機溶剤が多く使われてきました。

ペイントソルブWを用いたグラビア印刷シリンダの洗浄事例では、超音波、回転ブラシ洗浄、ワイプ、リンス、乾燥を組み合わせた自動洗浄システムで、厚く堆積したインキを洗浄しています。
洗浄条件は、液温40〜50℃、洗浄時間3分とされています。

この事例では、洗浄工程の人件費削減、溶剤使用量削減、作業者の安全性確保にもつながったと紹介されています。

単に「汚れを落とす」だけでなく、洗浄工程の自動化・省力化・安全性向上まで含めて検討できる点は、ペイントソルブWの大きなポイントです。

使用例:塗装マスク治具の洗浄
塗装マスク治具は、塗料の種類や塗装回数によって汚れ方が大きく変わります。ペイントソルブWを使用した塗装マスク治具の洗浄事例では、40〜50℃に加温し、回転式シャワー洗浄機で5〜10分洗浄した例が紹介されています。2液硬化型やアクリルなど、多様な塗料に対応できる可能性があり、炭化水素系溶剤と遜色ない洗浄力があるとされています。
治具洗浄では、洗浄力だけでなく、

  • 作業者負担
  • 引火リスク
  • 管理業務
  • 治具や洗浄機器への影響
  • 接触時間
  • 洗浄方法

も重要です。そのため、従来溶剤からの置き換えを検討する価値があります。

使用例:樹脂製サイドモール塗膜剥離

ペイントソルブWは、塗膜剥離用途にも使用例があります。

樹脂製サイドモールの塗装不良品を対象にした事例では、超音波洗浄機を使用し、50℃で30分洗浄。洗浄開始から数分で塗膜が剥離し始め、30分後にはほぼ完了したと紹介されています。
洗浄後の樹脂部品には溶けた様子がなく、塗膜を剥離して樹脂部品単体に戻すことで、リサイクルにつながる可能性も示されています。

ただし、この事例はあくまで特定条件での結果です。
樹脂への影響は材質、添加剤、塗装仕様、温度、時間によって変わるため、同じ結果がすべての樹脂で得られるとは限りません。


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ペイントソルブWの使用上の注意

ペイントソルブWは、原液使用が基本です。
不用意に希釈すると、洗浄性能が低下する可能性があります。

また、40〜50℃程度に加温すると洗浄効果が向上するとされていますが、加温によって素材への影響も出やすくなります。

特に注意が必要なのは、

  • ABS
  • PC
  • PS
  • 一部ゴム材
  • シール材
  • パッキン類

などです。

加温、長時間浸漬、超音波洗浄を組み合わせる場合は、必ず事前テストを行ってください。

感光性樹脂・版材には使用できません

ペイントソルブWは水性のため、以下のような感光性樹脂材料には基本的に使用できません

  • ドライオフセット用樹脂版
  • フォトポリマー系樹脂版
  • 水溶性緩効樹脂

洗浄成分が樹脂構造へ作用し、膨潤、軟化、寸法変化、表面劣化、版性能低下を引き起こす可能性があります。特に樹脂版は、数μm〜数十μmレベルの形状精度が印刷品質に影響します。わずかな変化でも、網点再現性の悪化、転写不良、寿命低下につながる可能性があります。そのため、感光性樹脂・版材への使用はNGという前提で考える必要があります。

使用方法

汚れの種類や対象物に応じて、以下の方法で使用します。

  • 浸漬
  • スプレー
  • 拭き取り
  • 超音波洗浄

加温によって洗浄性が向上する場合もありますが、温度条件、接触時間、材質適性によって結果は大きく変わります。

導入前には、必ず実際の対象物で確認することを推奨します。

導入に向いているケース

ペイントソルブWは、次のような現場に向いています。

  • 有機溶剤使用量を減らしたい
  • 作業環境を改善したい
  • 臭気を減らしたい
  • 強固な塗料・接着剤を除去したい
  • 洗浄品質を安定させたい
  • 蒸留再生を検討したい

一方で、樹脂・ゴム部品、感光性樹脂、フォトポリマー、即乾性が必要な工程、材料適性が確認できていない場合には注意が必要です。最適なのは、従来溶剤、ペイントソルブM、ペイントソルブWを用途に応じて使い分けることです。

まとめ

ペイントソルブWは、高い洗浄力と剥離性能を持ち、有機溶剤代替や作業環境改善に役立つ可能性のある洗浄液です。ただし、植物由来・低VOCという特徴がある一方で、「安全そうだから気軽に使える」製品ではありません特に、樹脂・ゴム・版材への使用では、素材影響、加温条件、浸漬時間を十分に確認する必要があります。実際の適用可否は、汚れの種類、素材、温度条件、洗浄方法、接触時間によって変わります。

特殊阿部製版所では、用途や対象材質に応じた洗浄剤選定のご相談を承っております。

「今のシンナーを減らしたい」
「塗料・接着剤を効率よく除去したい」
「樹脂への影響が心配」

このようなお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。

お問い合わせ・ご相談

実際の適用可否は、

  • インキの種類
  • 素材
  • 使用方法

によって変わります。
特に樹脂材質や洗浄条件による影響評価は重要です
また、用途に応じた別仕様の洗浄剤もございます。

現場条件に合わせた最適なご提案をいたしますので、
担当営業またはホームページのお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。



 

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