ドライオフセット樹脂版は湿気で傷む?梅雨時に見直したい保管・洗浄・取り扱いの注意点
「樹脂版の寿命はどれくらいですか?」
お客様から、このようなご質問をいただくことがあります。しかし実際には、樹脂版の寿命は「○万ショット印刷できる」と単純に決められるものではありません。
版の取り付け回数や印刷条件、使用するインキ、洗浄方法、保管環境など、さまざまな要因が複雑に影響し合うためです。
特に梅雨時は、湿気や温湿度変化によって保管環境が変化しやすく、樹脂版の状態にも影響を及ぼす可能性があります。
今回は、樹脂版の寿命を左右する要因と、梅雨時に見直したい保管・洗浄・取り扱いについて解説いたします。
目次
1. 樹脂版の寿命は印刷数だけでは決まらない
2. 湿気そのものよりも「保管環境の変化」に注意
3. 洗浄方法によって樹脂版の寿命は変わる
4. 白インキやメタリックインキは摩耗しやすい
4. 樹脂版を長持ちさせるためのチェックポイント
5. まとめ
樹脂版の寿命は印刷数だけでは決まらない
樹脂版の寿命を考える際、「何枚印刷したか」だけに目が向きがちですが、実際にはそれだけでは判断できません。
例えば、同じ総印刷数であっても、
- 小ロットを繰り返し、版の着脱回数が多い場合
- 長時間連続運転で版を取り付けたまま使用する場合
では、版にかかる負荷は大きく異なります。
弊社でも、樹脂版の寿命へ大きく影響する要因として、主に次の4つを挙げています。
- 版セット時の引張応力によるピン穴の変形
- 洗浄溶剤によるダメージ(ラッカーシンナーや水溶性の希釈剤等)
- インキ顔料による摩耗 (特に白やメタリック色等)
- 使用条件や運用方法の違い
版を取り外して見当合わせを繰り返すことで、ピン穴は徐々に変形していきます。ベースはスチール製のため、一度変形すると元には戻りません。
また、洗浄方法や使用するインキによっても版の寿命は変化します。そのため、「印刷枚数だけ」で寿命を判断することは難しいのです。

湿気そのものより「保管環境の変化」に注意
梅雨時になると、「湿気で樹脂版は傷みますか?」というご質問をいただくことがあります。
実際のところ、湿気だけで樹脂版が劣化すると断言できるわけではありません。
しかし、フォトポリマー版全般では、高湿度環境や急激な温湿度変化を避け、一定の環境で保管することが推奨されています。
梅雨時は、
- 保管場所の湿度上昇
- 夜間と日中の温度差
- 結露の発生
- 洗浄後の乾燥不足
などが重なり、版の保管環境が悪化しやすくなります。
そのため、版そのものだけでなく、保管状態や取り扱い方法まで含めて見直すことが重要です。
なお、弊社でも過去には、湿気が非常に少ない環境(低湿度環境)で樹脂層がベースから剥離した事例を確認したことがありました。
ただし、この事例で使用されていた樹脂材料は現在は採用しておらず、現在使用している樹脂では同様の現象は確認されていません。
現在の樹脂版で経年劣化やダメージが進行した場合は、全面が剥離するというよりも、細線や小さな点、ベタ部の角などが欠けるような形で現れることが多くなっています。
洗浄方法によって樹脂版の寿命は変わる
樹脂版を長持ちさせるために重要なのが、日頃の洗浄方法です。
版を洗浄する際、使用する溶剤によっては、
- 細線の欠け
- 小さな点の欠け
- ベタ部の角の丸まり
- コーティングの剥離
などが発生する場合があります。
そのため、「どんな洗浄剤でも同じ」というわけではありません。
一方で、「アルコール系洗浄剤は絶対に使用してはいけない」というわけでもありません。
弊社で確認している範囲では、短時間の汚れ除去や軽い拭き取り用途でアルコール系洗浄剤を使用すること自体は問題ありません。
ただし、樹脂の種類によってはアルコールへの耐性が異なります。
長時間浸漬したり、頻繁にアルコールのみで洗浄を繰り返したりすると、版への影響が大きくなる可能性もあります。
また、有機溶剤を避けたいという理由だけで、すべての洗浄をアルコールへ置き換えることはおすすめできません。
版材に適した洗浄方法を選択し、推奨される方法でメンテナンスを行うことが、樹脂版を長持ちさせるポイントです。

白インキやメタリックインキは摩耗しやすい
使用するインキも樹脂版寿命へ影響します。
白インキやメタリックインキには粒子径の大きい顔料が含まれていることが多く、一般色と比較すると版表面への摩耗がやや大きくなる傾向があります。
もちろん通常使用で大きな問題になるわけではありませんが、長期間使用する場合は、版の摩耗状態も定期的に確認することをおすすめします。
樹脂版を長持ちさせるためのチェックポイント
梅雨時は、次のような点を意識することで、版への負担を減らすことができます。
保管
- 高温多湿を避ける
- 急激な温湿度変化を避ける
- 結露が発生しない環境で保管する
- 洗浄後は十分に乾燥させる
- 重ね置きや無理な荷重を避ける
洗浄
- 版材に適した洗浄剤を使用する
- 強く擦りすぎない
- インキ汚れを長時間放置しない
- アルコール系洗浄剤を使用する場合も、版材への影響を考慮しながら適切に使用する
使用
- 着脱回数を把握する
- ピン穴の変形を定期確認する
- 細線やベタ部のけを確認する
- 白・メタリックインキ使用時は摩耗状態も確認する

まとめ
樹脂版の寿命は、印刷数だけで決まるものではありません。
版の着脱回数や洗浄方法、保管環境、使用するインキなど、多くの要因が積み重なって寿命へ影響します。
特に梅雨時は、湿気そのものというよりも、高湿度による保管環境の変化や結露、乾燥不足などが版へ影響を及ぼす可能性があります。
また、日頃の洗浄方法も版寿命を左右する重要な要素です。アルコール系洗浄剤は短時間の拭き取りであれば問題ありませんが、
樹脂の種類によって耐性は異なるため、版材に適した洗浄方法を選択することが大切です。
「最近版の持ちが悪くなった」「細線が欠けやすくなった」と感じた場合は、印刷条件だけでなく、保管環境や洗浄方法、版の取り扱いまで含めて見直してみてはいかがでしょうか。
