夏の暑さで印刷品質は変わる? 特殊印刷で知っておきたい高温の影響
前回の記事では、梅雨時期に起こりやすい印刷トラブルについてご紹介しました。
梅雨は湿度が高くなることで、インキの乾燥が遅くなったり、結露が発生したりと、「水分」が印刷品質へ大きな影響を与えます。
では、梅雨が明ければ印刷条件は安定するのでしょうか。
実は、そうではありません。
夏になると今度は「高温」という新たな要因が印刷品質に影響し始めます。
弊社にも毎年夏になると、
- 「午前中は問題なかったのに午後から版残りが増えた」
- 「昨日までと同じ条件なのに色が安定しない」
- 「突然欠けや転写不良が出るようになった」
といったご相談をいただくことがあります。
このような現象が起こると、
「版が傷んだのでは?」
「シリコンパッドの寿命では?」
「印刷機の調子が悪いのでは?」
と考えてしまいがちですが、実際には夏の高温によって印刷条件そのものが変化していることが原因の場合も少なくありません。
今回は、夏場に印刷条件が変わってしまう理由についてご紹介します。
目次
1. 梅雨と真夏では、印刷不良の原因が違います
2. 昨日と同じ条件のはずなのに、印刷できないのは何故
3. 明日から確認したい、3つのポイント
4. 真夏は「印刷条件」だけではなく「環境条件」も管理する
4. 次回予告
梅雨と真夏では、印刷不良の原因が違います
梅雨と夏は、どちらも印刷品質に影響を与える季節ですが、その原因は大きく異なります。

梅雨では「水分」が問題になります。
一方、真夏では「温度」によって材料そのものの状態が変化することが、大きな違いです。
つまり、同じ「夏場の印刷トラブル」でも、そのメカニズムは全く異なります。
「昨日と同じ条件」のはずなのに、なぜ印刷できないのでしょうか
特殊印刷では、「印刷機の設定」が品質を決めていると思われがちです。
もちろん、印圧や速度などの設定は重要です。
しかし実際には、それ以上に品質へ影響を与えているものがあります。
それが、
- インキ
- シリコンパッド
- 樹脂版
- ワーク(印刷対象物)
- 治具
といった印刷に関わる材料です。
これらには一つ共通点があります。
どれも温度によって性質が変化するということです。
インキは温度によって乾燥の仕方や粘度が変わります。
ワークは保管場所や成形直後かどうかによって温度が異なります。
樹脂や金属も、目には見えないほどわずかですが熱によって膨張します。
つまり、夏になると印刷機は同じでも、印刷に関わる材料の状態は昨日とは違っているのです。
「午前中は良かったのに」が起こる理由
例えば、朝は25℃だった工場内が、午後には35℃近くまで上昇したとします。
印刷機の設定は何も変えていません。
しかし、
- インキの状態
- ワークの温度
- シリコンパッドの状態
- 版の状態
は、朝とは異なっています。
つまり、「印刷条件」はすでに変わっているのです。
その結果、午前中はきれいに印刷できていたにもかかわらず、
午後になると
- 版残り
- 欠け
- 色ムラ
- 転写率の低下
といった現象が現れることがあります。
このような場合、印刷機の故障ではなく、周囲の環境変化が原因である可能性も考える必要があります。
明日から確認したい、3つのポイント
夏場に印刷条件が安定しないと感じたら、まずは次の3点を確認してみてください。
① インキはいつ調合しましたか?
朝に調合したインキを、そのまま午後まで使用していませんか。
時間の経過とともに溶剤は少しずつ揮発し、インキの状態は変化していきます。
「昨日と同じ配合」でも、「朝と午後」では同じ状態とは限りません。
② ワークの温度は確認していますか?
ワークは、
- 成形直後
- 倉庫保管
- トラック輸送
- 直射日光
などによって、室温以上に熱くなっていることがあります。
室温だけでなく、ワーク自体の温度も印刷品質へ影響する要因の一つです。
③ 不良が発生した時間を記録していますか?
「午後になると不良が増える」
「30℃を超えると版残りが起こる」
このような傾向が分かるだけでも、不良原因の切り分けは大きく前進します。
印刷条件だけではなく、
- 工場内温度
- 発生した時間帯
- ワーク温度
も一緒に記録しておくことをおすすめします。
夏は「印刷条件」だけではなく「環境条件」も管理する季節
夏場の印刷不良は、印刷機だけを調整しても改善しないことがあります。
その理由は、印刷条件だけではなく、印刷環境そのものが変化しているためです。
「昨日と同じ条件なのに印刷できない。」
そんなときは、まず機械を疑う前に、工場内の温度やワークの状態にも目を向けてみてください。
思わぬところに原因が隠れているかもしれません。
次回予告
今回は、夏場になると印刷条件そのものが変化する理由についてご紹介しました。
次回は、その中でも特にお問い合わせの多いパッド印刷においての「版残り」をテーマに、
- なぜ夏になると版残りが増えるのか
- インキはどのような状態変化を起こしているのか
- 現場ではどのような対策が有効なのか
を、パッド印刷の転写メカニズムとあわせて詳しく解説します。


