パッド印刷はなぜ湿気に弱い?梅雨時に増える転写不良の原因を解説
前回の記事では、梅雨時に増える印刷不良についてご紹介しました。
その中でも特に影響を受けやすいのがパッド印刷です。
「雨の日だけ転写が悪い」
「朝だけ印刷が安定しない」
「版残りや欠けが増える」
こうした現象の背景には、パッド印刷特有の転写メカニズムが関係しています。
今回は、湿気がパッド印刷へ与える影響について詳しく解説します。
パッド印刷は「溶剤の蒸発」で成立している
パッド印刷は、版からインキを取り、シリコンパッドへ転写し、さらにワークへ転写することで印刷を行います。
一見すると単純な工程に見えますが、実際にはインキ中の溶剤が適度に蒸発することで転写が成立しています。
もし溶剤がほとんど蒸発しなければ、インキは流動性が高すぎて、版からパッド、パッドからワークへうまく移りません。
逆に蒸発しすぎると、インキが乾きすぎてしまい、今度は転写不足や欠けの原因になります。
つまりパッド印刷は、「適度な溶剤蒸発」という非常に狭いバランスの上で成立している印刷方式なのです。

湿度が高くなると何が起きるのか
梅雨時は空気中の水分量が増加し、工場内の温湿度も大きく変動しやすくなります。
高湿度環境では、インキ中溶剤の揮発条件やインキ表面の乾燥挙動が通常時と変わることがあります。
その結果、
- 版上のインキ状態
- パッドへの転写状態
- ワークへの転写状態
のすべてが影響を受ける可能性があります。
さらに梅雨時は、インキだけでなく、材料温度や工場内の空気中水分、搬入直後のワーク表面状態も変化しやすくなります。
そのため、普段は問題なく印刷できている条件でも、湿度上昇によって転写バランスが崩れ、版残りや転写不足、部分欠けなどが発生することがあります。
発生しやすい不良① 版残り
梅雨時に最も発生しやすいのが、乾燥不良です。高湿度環境ではインキ中の溶剤が揮発しにくくなり、インキ表面の乾燥挙動が変化します。
その結果、
- ベタムラ
- にじみ
- ブロッキング
- ゴミ付着
- 指触乾燥不良
などが発生しやすくなります。
特に、スクリーン印刷やベタ面印刷、高膜厚印刷、UV印刷などでは影響が大きくなりやすい傾向があります。一見するとインキ不良のように見えても、実際には高湿度環境が原因となっている場合があります。
発生しやすい不良② 転写不足
転写不足も、梅雨時に相談が増えやすい不良の一つです。
パッド印刷では、版からパッド、パッドからワークへとインキが順番に移っていきますが、この移り方のバランスが崩れると、ワーク側へ十分にインキが乗らなくなります。
症状としては、
- 全体的に印刷が薄い
- 細線がかすれる
- 小文字がきれいに出ない
- ベタの一部だけ色が乗らない
といった形で現れます。
特に、細かいロゴや小さな文字、細線の多いデザインでは影響が出やすく、普段は問題ない条件でも、梅雨時だけ再現性が落ちることがあります。
発生しやすい不良③ 部分欠け
部分欠けは、梅雨時のパッド印刷で非常に起こりやすい不良の一つです。
例えば、
- ロゴの一部が抜ける
- 文字の端だけ欠ける
- ベタの一部だけ転写されない
といった症状がこれにあたります。
部分欠けは、版残りや転写不足の延長として現れることも多く、
「版にインキが残る」
「パッドが十分にインキを持っていけない」
「ワーク表面がインキを弾きやすくなっている」
という流れの中で発生します。
特に、
- 朝イチの立ち上がり
- 雨天時
- 夜間保管後の材料をそのまま使った時
- 搬入直後のワークをすぐ印刷した時
などに発生しやすい傾向があります。
インキやパッドを交換しても改善しない場合は、印刷条件そのものではなく、環境要因を疑う必要があります。
発生しやすい不良④ 乾燥不安定・汚れ
梅雨時は、印刷後の乾燥やセットの安定性にも影響が出ることがあります。
高湿度環境ではインキの乾燥挙動が変化し、乾燥が遅れたり、表面の状態が不安定になったりすることがあります。
その結果、
- 印刷後の汚れ
- 触った時のにじみ
- ベタ面の不安定
- 次工程での擦れや汚れ
などが起こる場合があります。
パッド印刷のトラブルというと「版からワークへ移るまで」の問題に目が向きがちですが、実際には印刷後に安定して乾燥するかどうかも品質に大きく影響します。
梅雨時は転写だけでなく、その後の乾燥状態まで含めて確認する必要があります。
実は湿気だけが原因ではない
注意したいのは、「湿度が高い=必ず不良になる」というわけではないことです。
実際の現場では、
- 温度変化
- 湿度変化
- インキ粘度
- 溶剤バランス
- 除電状態
- 材料温度
などが複雑に関係しています。
そのため、同じ湿度でも現場によって発生する不良が異なることがあります。
湿気は単独で問題を起こすというよりも、転写バランスを崩す要因の一つとして考える方が実際に近いでしょう。
梅雨時に確認したいポイント
パッド印刷の不調が発生した場合は、版やパッドだけでなく環境条件も確認することをおすすめします。
特に、
- 工場内湿度
- インキ粘度
- 溶剤添加量
- 材料温度
- 除電装置の状態
- 朝夕の温湿度変化
などは確認しておきたいポイントです。
「条件を変えていないのに急に不良が増えた」という場合は、環境変化が隠れた原因になっていることも少なくありません。
梅雨時に試したい対策
湿気による不良が疑われる場合は、版やパッドを交換する前に、まず環境条件を見直してみることをおすすめします。
パッド印刷では、温湿度変化によってインキ状態や転写バランスが変化するため、条件の微調整で改善するケースがあります。
① 工場内の温湿度を管理する
梅雨時は、まず印刷環境を把握することが重要です。
温湿度計を設置し、印刷時の環境を記録するだけでも、不良との相関が見えやすくなります。
実際にお客様の現場でも、
- 業務用除湿機の導入
- 印刷室の空調管理
- 除湿運転の強化
によって、不良発生頻度が改善した事例があります。
版残りや転写不安定が天候によって変化する場合は、環境管理を検討する価値があります。
② インキ粘度を見直す
湿度上昇によってインキ挙動が変化する場合があります。
普段と同じ調整条件でも、版残りや転写不足が出る場合は、インキ粘度や希釈条件を見直す必要があります。
③ 材料温度を確認する
搬入直後のワークや夜間保管後の材料は、工場内との温度差によって結露が発生することがあります。
材料はできるだけ工場環境へ馴染ませてから使用することをおすすめします。
④ 除電装置を確認する
エアフィルター、ドレン、除電装置の状態を確認し、湿気や静電気以外の要因が重なっていないかを見直します。
⑤ 不良発生時間帯を記録する
朝だけ不良、雨の日だけ不良、午後には改善、といった傾向がある場合は、環境要因の可能性が高くなります。
発生時間帯や天候の記録は、原因究明のヒントになります。
まとめ
パッド印刷は、版からパッド、パッドからワークへインキを転写する工程の中で、インキ状態の変化に大きく依存しています。
そのため梅雨時のように環境条件が変化しやすい時期には、版残り、転写不足、部分欠け、乾燥不安定といった不良が発生しやすくなります。
特に、
- 雨の日だけ不安定
- 午前中だけ転写が悪い
- 設備を触っていないのに歩留まりが落ちた
という場合は、版やパッドだけでなく、温湿度環境や材料温度、空気中水分などにも目を向けてみてください。
不良対策を進めるうえでは、印刷条件だけでなく、環境条件も管理対象として考えることが重要です。
